伝説の通りになって
3月1日、卒業式。
私達は体育館で、卒業式に参加していた。
とうとうこの日が来たかと、何だか切ない気持ちになってる。
女の子は、みんな泣きじゃくっていた。
友だち・恋人と離れてしまう、この日。
新たな暮らしに変わるこの日。
それぞれの想いが、彼女たちの涙を迎え入れてる。
私はというと、やっぱり涙したかったけど、ここは伊集院家のしきたりがそうさせてくれなかった。
高校卒業するまで、男として暮らす・・・
それに私(ちゃんと言うなら、僕、ね)は、結構もててたから、女の子たちのイメージを崩すわけには行かなかった。
けど、こんな男という生活も今日でおしまい。
私は悩んでいた。
きらめき高校には伝説があって、伝説の樹の下で女の子が告白すると、ずっと幸せになれるって。
おかしいかもしれないけれど、そんな伝説に乗っかりたいという気持ちはあった。
けど、今日はまだ高校生。
伝説のとおりにするなら、掟を破ってしまうことになる。
でも卒業式の中、私の中での想いはどんどん高まっていった。
別れてしまうなんて考えられない!
卒業式が終わると、私は愛しの人の机の中に、手紙を一通差し入れた。
そして、伝説の樹の下で、その人を待つことにした。
しばらくすると、誰かが走ってくる音が聞こえた。
そしてその人は私を見つけると、
「え!あなた誰?」
そう聞かれてしまった。
しかたがないわね、さっきまで男の姿でいたんだから。
外井に頼んで手に入れた、きらめき高校の女子の制服を着た姿なんて誰にもわからないわよね。
勇気を出して、相手に伝えてみた。
「私です、レイ、伊集院レイです」
相手は目をまん丸くして私を見つめた。
「伊集院君?いや、伊集院さん??」
まだ信じてないみたい。
けど、私はどうしても想いを告げたくて、伝説を信じて、この姿で告白することにしたの。
「こんなところに呼び出してしまってごめんなさい、どうしてもあなたに聞いてほしいことがあるの・・・」
「い・・・いや、レイちゃん、ここの伝説知ってるの?」
そう、答えが返ってきた。
私はしきたりのこととか色々と告白した。
「そうだったんだ・・・大変だったね・・・全く私気づいてなかった・・・今までつらい思いさせたね、ごめんなさい」
そう言って抱きしめてくれた。
「これから、お互い、真実を見つめ合っていこうよ、私はもちろんレイちゃんが好き。だから、お互いに一歩ずつ歩んでいこう?」
「私、館林見晴は、一生、レイちゃんを守りぬきます!」
そう、彼女、見晴ちゃんは、伝説の樹の下で誓いをたてた。
「正直言うと、レイちゃんが女だったのはびっくりしたよ、でもね、ずっとレイちゃんのこと可愛いなとは思ってたんだ」
そう告げられた。
可愛い・・・そんなふうに思っててくれたこととてもうれしく思えた。
けど、幸せって儚いもので、私はこれからの真実を見晴ちゃんに話さないといけなかった。
「見晴ちゃん、私ね、留学するの」
そういうと、私を抱きしめていた腕が解けた。
「え!本当なの?そんな・・・」
見晴ちゃんは悲しげな顔をした。
「せっかく相思相愛になったのに、そんなのって・・・」
見晴ちゃんは考えていた。
しばらく顔をあげずにいたが、ふと顔が上がる。
「って言ってても仕方がないか、向こうに行っても浮気なんかしないでよね、レイちゃん」
後押ししてくれた。
やっぱり見晴ちゃんを選んで正解だと思った。
彼女なら多分、ずっと待っててくれる。
もちろん、長期休暇の時とかには帰って、見晴ちゃんに元気な姿見せるつもりだったけど。
「見晴ちゃんこそ、浮気はダメよ」
そう言うと私は笑顔になった。
「ちゃんと勉強してきて、将来は私が見晴ちゃんを養ってあげるんだから」
「頼もしいね!けど、私も頑張るよ、お互い、将来のために頑張ろうね、で帰ってきた時にはデートしよ」
しっかりとデートの約束までしてしまった。
「レイちゃん、いつから、行くの?」
「まだ2週間先よ」
その答えを聞いて安心したのか、見晴ちゃんは私にキスした。
「なら、明日、どっか遊びに行こうよ!」
誘いがかかり私はものすごく嬉しかった。
女としてのこの伊集院レイを受け入れてくれたことに感謝した。
「けどさ、レイちゃんには悪いけど、私、ずっとレイちゃん事男として好きだった。」
そう言われると、ちょっと悲しくなった、女の私はダメなのかと思ってしまう。
「でも、女の子としてのレイちゃんはだって、やっぱりレイちゃんなんだよ。私、自分が信じられないけど、女のレイちゃんのほうが好きみたい」
そう言って、私のこと抱きしめた。
私も抱きしめ返した。
そして自然に涙が出てくる。
卒業式で泣けなかった分、今、見晴ちゃんの腕の中で泣いている。
卒業ってこんなに切ないものだったんだ・・・
「いいよ、いいんだよ、思いっきり泣いて・・・レイちゃんずっと一人で泣いてたでしょ、でもねこれからは私の腕の中で泣いてね?」
そう言われると、涙がたくさん溢れ出てくる。
好きになったのが見晴ちゃんで、本当に良かった・・・
伝説の木の下での告白がちゃんと伝説通りになればいいと思った。
そして、2週間後、空港にて。
「レイちゃん、今、そんなに泣いてて大丈夫?本当なら私も一緒に行きたかったけど・・・」
遮るように言った。
「いいの、見晴ちゃんは自分の夢追いかけて。私も頑張るから」
「そうね、帰ってきた時には一番に連絡ちょうだいね!私だって悲しいんだぞ」
「うん。絶対に連絡するね」
見晴ちゃんはキスしてきた。
そして抱きしめてくれた。
このままずっとこうしていたい、そう思った。
時が止まればいいのにと・・・
「ほら、もう乗らないと・・・間に合わなくなるよ、レイちゃん」
「あ、うん、それじゃ、元気でね、手紙出すから返事ちょうだいね」
「うん、絶対に書くよ、元気でね!」
そうして、飛行機に乗り、私は留学先へと向かった。
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