卒業して
ふぅ・・・
私はひとつため息をついた。
そして、窓の外を見つめる。
もう・・・卒業するんだなぁ、私達。
なんだか切なくなってくる。
そして考えたくもない事実を思い出し、悲しくなる。
「明日は卒業式ね」
紐緒さんは、平然として言う。
紐緒さんは、離れててしまうこと、大丈夫なのかなぁ。
私は・・・私は・・・離れたくなんてないのに!
そう考えてたら、自然と涙が出てきた。
「沙希・・・卒業って言ってもね、私達が、離れるわけじゃないのよ。
高校生活が終わるだけ、それだけよ」
そう言って抱きしめてくれた。
ああ・・・この時が止まってしまえばいいのに・・・
卒業の日。
私は泣かないと決めていたのにもかかわらず、泣いてしまった。
確かに卒業しても、私達の中が壊れるわけじゃないのは解ってるんだけど・・・
・・・紐緒さんを探しに行こう・・・
片付けようと思って机の中を見た。
何か入ってる。
取り出してみると、一通の手紙が入ってた。
開いてみると、見慣れた、紐緒さんの文字で、
「伝説の樹の下で待ってます」
とだけ、書いてあった。
急がないと・・・
私は伝説の樹の下へ、走っていった。
あの文字は紐緒さんの字、紐緒さん、ここの伝説知ってるのかなぁ?
YESと言わんばかりに、紐緒さんはそこにいた。
顔を上げると心配そうに紐緒さんが見つめていた。
「紐緒さん・・・あの手紙・・・」
問いかけると、
「私よ、走ってきてくれたのね・・・ありがとう」
「あの手紙・・・やっぱり紐緒さんだったのね」
「そうよ、私から」
私は、思わず、泣いてしまった。
離れたくない・・・その思いが強くなってきて・・・
「沙希・・・昨日も言ったと思うけど、離れないのよ、私達」
「どういうこと?逢えなくなるじゃない!」
紐緒さんは私を抱きしめた。
髪を撫でながら
「一緒に暮らすのよ、私達」
「え!」
「アパートは借りておいたわ、あとは引っ越すだけよ」
そんないきなり!
でも女同士だし、友達とって言えば大丈夫か。
「そう・・・うちの親に会ってね、紐緒さん」
「いいわよ」
「それと、私はもう、世界征服なんてしない、沙希だけを大事にしていくわ・・・
これを言いたかったのよ、今日は」
そう言ってそっぽを向いてしまう。
照れてるのね、きっと。
・・・一緒に暮らす・・・
いいのかな・・・私なんかで。
できる事といったら、料理くらいだけど・・・
でもいっか、これから、色々と覚えていけば。
紐緒さんと幸せになれることができるのなら、そんなに嬉しい事はない。
私は、紐緒さんに、そっとキスした。